
普段私たちが何気なく手にしている食品には、食品の保護や購入のための情報提示など、重要な役割を持つ包装資材が使用されています。包装資材にはさまざまな種類があり、食品の性質や包装目的に適した物を選択する必要があります。
この記事では食品包装資材の役割や資材について解説します。
食品包装資材に使用される材質の特徴もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
包装資材とは

包装資材は物品の輸送や保管、取引、使用などにあたり必要となる資材のことです。
ここでは食品包装資材と食品以外の包装資材について解説します。
食品包装資材とは
食品包装資材は食品を入れる資材のことで、具体的には以下のようなものがあります。
- トレー・蓋付容器:肉・魚介類、野菜などの生鮮食品や総菜の包装によく使われる
- 袋:幅広い用途があり、プラスチックや紙など材質もさまざま
- フィルム:袋になる前のものでLDPE(低密度ポリエチレン)やHDPE(高密度ポリエチレン)などさまざまな材質がある
- ラベル:商品ラベルや割引ラベルなど食品に添付するもの
- 紙器類:段ボールやケーキ箱などの紙でできた資材
- 梱包・結束用品:粘着テープや輪ゴム、PPバンドなど結束したり、梱包するための資材
食品包装には幅広い種類があるため、食品の形状や性質に合わせて適切なものを選定することが重要です。
食品以外の包装資材
食品以外の包装資材には医薬品包装資材や産業用包装資材などがあります。
それらの包装資材も食品包装資材と同様、製品の輸送や保管に必要となる資材のことを指します。
食品包装資材の役割

食品包装資材には以下の4つの役割があります。
- 食品の保護
- 保管・輸送時の労力とコストの削減
- 情報の提示
- 販売促進
ここでは上記4つの役割についてそれぞれ解説します。
食品の保護
食品包装資材には食品の価値および状態を保護する役割があります。
食品包装資材がなければ輸送中の落下や振動などの衝撃を受けて食品がダメージを受けてしまい、さらには保管中の熱や湿気、臭い、酸化、虫などにより品質が低下する恐れがあります。
食品包装資材によって外部要因から食品を守り、品質を保持したまま消費者に届けることができるのです。
保管・輸送時の労力とコストの削減
食品包装資材には、保管・輸送時の労力とコストを削減する役割があります。
例えば大量の商品を輸送する場合、包装のサイズを小さくしたりまとめて包装したりすることにより、輸送しやすくなるでしょう。輸送効率が上がることで輸送にかかるコストも削減することができます。
情報の提示
食品包装資材は情報提示という重要な役割も担っています。
食品包装に表示される情報には以下のようなものがあります。
- 名称
- 賞味・消費期限
- 保存方法
- 遺伝子組換え
- 製造者名等
- 原材料名
- 内容量
- 原産地
- 添加物
- アレルギー
- 主要栄養成分
これらの情報は食品表示法によって食品パッケージに表記が義務付けられているもので、消費者の健康や安全にかかわる大切なものです。
販売促進
食品包装資材は製品の魅力を訴求する販売促進の役割も持っています。
食品のアピールしたいポイントやキャッチコピーをパッケージにデザインすることにより、消費者の商品を購入したいという購買意欲を喚起することができるのです。
食品のパッケージは消費者が購入を判断するための重要な要素の一つで、どれほど良質な製品でもパッケージデザインが優れていなければ手に取ってもらえません。
食品包装技法の種類

食品包装資材を使った包装技法には以下のような種類があります。
- 密封包装・密封殺菌包装
- 真空包装
- ガス置換包装・ガス封入包装
- 脱酸素包装
- 無菌充填包装
ここでは上記5つの種類についてそれぞれ解説します。
密封包装・密封殺菌包装
密封包装・密封殺菌包装は、食品を品質劣化や微生物から保護する包装方法です。
密封包装は外部の空気や湿気を遮断することで、酸化や乾燥を防ぎ、保存性を向上させます。
密封殺菌包装は、食品を包装した後に加熱によって殺菌処理を行う方法です。
これにより食品内部に残っている微生物や菌を殺菌し、長期間の保存が可能になります。
缶詰やレトルト食品が代表例で、密封と殺菌の両方を組み合わせることで、常温での長期保存が実現されています。
密封包装・密封殺菌包装は鮮度や風味を保つだけでなく、安全性を確保するためにも有用な方法です。
真空包装
真空包装は食品と空気の接触を最小限に抑える方法です。
食品を専用の袋や容器に入れ、内部の空気を抜いて真空状態にすることで、酸化や微生物の増殖を防ぎます。
これにより、食品の鮮度保持が一層高まるのです。
具体的には、肉や魚、チーズ、コーヒー豆などの包装によく使用されます。
真空パックされた肉製品は冷蔵庫での保存期間が延び、風味や栄養価の劣化も抑えられます。
またコーヒー豆も真空包装することで、酸化による風味の劣化を防ぐことが可能です。
キャンプや登山などのアウトドア活動でも、食品の持ち運びや保存に真空包装が用いられることが増えています。
ガス置換包装・ガス封入包装
ガス置換包装やガス封入包装は、包装内部を一度真空状態にしたあと特定のガスに置き換える方法です。
酸素は食品の劣化を進める要素の一つであるため、酸素の割合を低くすることで酸化を防ぎ、食品の保存性を向上させます。
ガス置換包装は特に生鮮食品や加工食品に対して効果的で、肉、魚、果物、野菜などの保存に広く利用されています。
ガス置換包装の主なメリットは、食品の風味や鮮度を保つことができる点です。
例えば、二酸化炭素は抗菌作用があることから、カビやバクテリアの発生を抑えることができ、窒素は酸素の置換に用いられ、食品の酸化を防ぎます。
これにより食品の品質と鮮度を保ちながら、保存期間を延長することが可能となるのです。
またガス封入包装は物理的な圧力から食品を守る役割も果たし、デリケートな食品の取り扱いにも適しています。
脱酸素包装
脱酸素包装は包装内部の酸素を取り除き、酸化による食品の劣化を防ぐ方法です。
この包装方法は酸素吸収剤を含む小袋を使用することが多く、酸素吸収剤は包装内部の酸素を吸収するため食品の酸化を大幅に遅らせることができます。
また酸素が完全に取り除かれることで味の変化やカビ・細菌の発生を抑えることができ、長期間にわたって食品の品質と風味を保つことが可能です。
この包装方法は特に酸化に敏感な食品、例えば食用油や日本茶などに適しています。
無菌充填包装
無菌充填包装は主にロングライフ牛乳、果汁飲料、無菌包装米飯などに使われる包装で、予め短時間高温加熱殺菌、超高圧力殺菌等の方法で食品を無菌化し、クリーンルームなどの無菌環境で包装し長期間に渡り、品質を保持する方法です。
無菌充填包装されたものは常温で長期間流通させることができ、食品ロス削減にもつながります。
また長時間の加熱殺菌ができない食品に無菌充填包装が使われる場合もあります。
無菌充填包装は加熱殺菌を必要とせず、なおかつ常温で長期間流通させられるため食品の貯蔵寿命を延ばすことができるのです。
さらに加熱殺菌をする包装方法と比べて、食品の品質劣化のリスクが少ない点も大きなメリットです。粘度の高い食品の包装にも適しています。
食品包装資材に使用される材質

食品包装資材に使用される材質として、以下のようなものが挙げられます。
- プラスチック
- 金属
- ガラス
- 紙
- 軟素材
ここでは上記5つの材質についてそれぞれ解説します。
プラスチック
プラスチック包装はPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの材質を使用した包装で、各種飲料や調味料用のボトルなどに多く使用されています。
近年はワインボトルなどにもプラスチックが使用されることが多く、幅広い製品に使われている材質です。
また他の素材と組み合わせることにより、耐熱性や耐湿性、シール性、バリア性などの機能性を付加することもできます。
金属
金属包装は缶詰や清涼飲料水、燃料容器、業務用調味料容器、キャップなどに広く用いられている包装方法です。
使用される主な素材にはアルミとスチールがあり、これに加えてスズやクロムでメッキされることもしばしばあります。
金属の主な特徴はその高い強度で、耐衝撃性が非常に高いため、商品の破損リスクを最小限に抑える必要がある場合に最適です。また遮光性やガスバリア性、密封性、保存性に優れているため、内容物の品質を長期間にわたり保護することが可能です。
しかし昨今では清涼飲料水や調味料の包装において、金属からプラスチックへの移行が進んでいます。
理由としては、軽量で取り扱いやすく、コスト面でも有利な点が挙げられます。
それでもなお、金属包装は優れた特性をたくさん持つことから、全てがプラスチックに取って代わられることはないでしょう。
ガラス
ガラス製の包装は主にお酒や調味料、ジャムなどに使用されています。
かつては牛乳容器など幅広い用途に利用されていましたが、近年ではその重さや輸送コストの高さ、破損しやすさなどの理由から、紙やプラスチック包装への移行が進んでいます。
ガラス包装の大きな特徴は、その透明度です。
これにより内容物を視認しやすく、美観を損なわずに製品を販売することが可能です。
高級感を演出するための保存容器としても非常に人気があります。
ガラスの持つ上品な質感は、販促の観点からも見逃せないポイントです。
最近ではプラスチックや紙製の代替品が進出している状況ですが、特定の高級品や伝統的な製品など、ガラスでないと表現できない価値も依然として存在しています。
紙
紙を用いた包装材は、廃棄のしやすさ、再利用が容易な点が大きな魅力です。
代表的な例としては、ブリックタイプやペーパー缶タイプの液体紙パック、製函トレイや絞り形成トレイなどの紙トレイ、また化粧箱や包装紙、段ボールなどが挙げられます。
これらはデザイン性が高く、製品の魅力を引き出すための印刷がしやすいという特徴があります。
さらに使用後に紙ごみとして簡単に廃棄できるため、扱いやすさも兼ね備えている点が魅力です。
しかし耐水性や耐油性、酸素バリア性が低く、ヒートシール性がないため、特別な加工が必要です。
特に耐水性の弱さは食品を直接包装する際には大きな問題となるため、紙容器の内側にプラスチックをラミネートする方法がよく用いられます。
このようにして、紙の特性とプラスチックの機能性を両立させる工夫がされています。
軟包装材料
軟包装材料はフィルムやシート状のものであり、菓子やパン、肉、魚、カップ麺など非常に幅広い用途で利用されています。
このように様々な製品を包むことができるのは、PEやPP、PS(ポリスチレン)、PET、アルミといった多様な素材が使用されているためです。
これらの素材を組み合わせることで、密封性や遮光性、耐熱性、耐寒性、防湿性など、各製品に求められる特性を高めることができます。
また素材の柔軟性が高いため、製品に合わせた形状やサイズの調整が容易である点も大きなメリットです。
軟包装材料を用いた包装は多くの事例がありますが、今回は、以下の3つの包装について解説します。
- 単体フィルム包装
- 多層フィルム包装
- レトルトパウチ包装
単体フィルム包装
単体フィルム包装はフィルム単体のみで使用される包装方法で、最も簡易な包装です。生鮮食品や菓子類、加工食品に多く用いられます。
野菜や穀物にはLDPE(低密度ポリエチレン )、パンや麺類にはLDPEまたはCPP(無延伸ポリプロピレン )などの素材が使用されるケースが一般的です。
多層フィルム包装
多層フィルム包装は複数の素材を張り合わせて多層化した包装方法で、幅広い用途があります。
主に使用される材質はOPA(二軸延伸ポリアミド)やOPP(二軸延伸ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート )、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、シーラント(ポリエチレンやポリプロピレン)などです。
ほかにも耐熱性の高い材質や強度の高い材質など、包装目的に合った素材が使用されます。
レトルトパウチ包装
レトルトパウチ包装はガスバリア性と遮光性および耐熱性の高い多層フィルムにより構成される包装方法です。
食品を袋に充填してヒートシールにより密封後、高温加熱殺菌を行うことで缶詰と同等の保存効果が得られるのが特徴です。
アルミ箔タイプと透明タイプの2種類があり、食品に合わせて選択されます。
まとめ
食品包装資材は食品を入れる資材のことで、密封包装・密封殺菌包装や真空包装、ガス置換包装・ガス封入包装などさまざまな種類があります。
食品包装資材に使用される材質にはプラスチックや金属、ガラス、紙、軟素材などがあり、目的や食品の性質に適したものを選択することが重要です。
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