
世界中で環境問題が深刻化する中で注目を集めているのが、「モノマテリアル」です。
モノマテリアルは1種類の素材から構成される製品のことで、再生工程におけるリサイクルのしやすさが向上します。
この記事では、モノマテリアルのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
モノマテリアル化やマテリアルリサイクルなどについてもまとめているため、参考にしてみてください。
目次
モノマテリアルとは

地球温暖化や気候変動などの環境問題が深刻化する中、環境配慮型素材の需要が高まっています。
その選択肢の一つに挙げられるのが「モノマテリアル」です。
ここではモノマテリアルとはどのようなものなのか詳しく解説します。
モノマテリアルは単一素材という意味の言葉
モノマテリアルは「モノ(mono)」と「マテリアル(material)」を組み合わせた「単一素材」という意味の言葉です。
1種類の素材や原料からできているものを指します。
モノマテリアルの対義語として、複数の素材や原料を組み合わせてできる「マルチマテリアル」が挙げられます。
例えばスーパーで袋詰めをする台に備え付けられているロール状の袋はPE(ポリエチレン)という樹脂を原料としており、他の素材が混ざっていないため、モノマテリアルと言えるでしょう。
従来のマルチマテリアルとの違い
従来のマルチマテリアルとモノマテリアルの違いとして、再生工程におけるリサイクルのしやすさが挙げられます。
複数の素材を組み合わせるマルチマテリアルは、再生工程での分離が難しく、埋め立てや焼却といったリサイクル以外の廃プラスチックの処理方法で処理されます。
その点モノマテリアルは1種類の素材や原料からできているため、リサイクルしやすいのです。
このことから、モノマテリアルは環境負荷を低減するために有効な対策といえます。
モノマテリアル化とは
モノマテリアル化とは、複数の素材から構成されるマルチマテリアルを1種類の素材から構成されるモノマテリアルに置き換えることです。
マルチマテリアルは素材を分離させることが難しいため、埋め立てや焼却などの処理方法に限られてしまいます。
モノマテリアル化することで、素材が1種類のみで構成されるためリサイクルが容易になり、CO2の排出量削減につながります。
モノマテリアル化の具体的な例としては、株式会社カナエのモノマテリアルポーションがあります。

蓋材・成形材がともにポリオレフィン系樹脂のみで構成されており、機能をそのままに、モノマテリアル化することに成功しています。
マテリアルリサイクルとは
マテリアルリサイクルとは、廃棄物の性質を変えずに新たな製品の材料として再利用することで、産業系プラスチック廃棄物を中心に行われてきました。
産業系プラスチック廃棄物は樹脂の種類が正確にわかっており、なおかつ異物の混入なども少ないため、原料として再利用しやすい特徴があります。
産業系プラスチック廃棄物によるマテリアルリサイクルには物性低下などの懸念もありましたが、プラスチック廃棄物の品質管理や製造加工技術の改良などにより、様々な部材に使用されるようになっています。
マテリアルリサイクルの工程
マテリアルリサイクルの工程は以下の通りです。
- 収集・分別:市町村の収集システムやリサイクルセンターにより集められ、ボトル・容器・フィルム・パッケージなど種類ごとに分別されます。
- 清浄・破砕:汚れや不純物を取り除いた後に破砕し、小さな粒子にします。
- 再生:マテリアルリサイクル工場で再生プロセスにかけられ、再生プラスチックが生成されます。
- 製品化・販売:再生プラスチックを新たな製品に加工し、市場で販売します。
またマテリアルリサイクルには「水平リサイクル(レベルマテリアルリサイクル)」と「カスケードリサイクル(ダウンマテリアルリサイクル)」があり、それぞれ以下のような特徴があります。
- 水平リサイクル:同じ製品の原材料としてリサイクルする方法
- カスケードリサイクル:同じ製品の原材料にするには品質が劣る場合、品質レベルが低い別の製品の原材料としてリサイクルする方法
モノマテリアルが注目される理由
モノマテリアルが注目される理由として、地球温暖化や気候変動などの環境問題が世界中で深刻化していることが挙げられます。
海外では環境に配慮していないプラスチック製品に課税される動きも進んでおり、国内ではプラスチックの資源循環の取り組みを促進する「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されました。
モノマテリアルはリサイクルしやすい素材構成となっているため、環境問題を改善する対策の一つとして注目されているのです。
モノマテリアル化のメリット

モノマテリアル化のメリットは以下の通りです。
- リサイクルしやすくなる
- 環境負荷を小さくできる
- 品質の向上が期待できる
- 循環型社会の実現に貢献できる
- 資源の節約になる
ここでは上記5つのメリットについてそれぞれ解説します。
リサイクルしやすくなる
モノマテリアル化することにより、リサイクルしやすくなるメリットがあります。
複数の素材で構成されるマルチマテリアル製品をリサイクルする際は素材ごとに分別する必要がありますが、1種類の素材で構成されているモノマテリアル製品であれば、分別工程を省略することができます。
さらに素材が1種類のみのためリサイクルする際に他の素材が混合する心配がなく、品質の高いリサイクル品を作り出すことが可能です。
環境負荷を小さくできる
モノマテリアル化は環境負荷を低減することにつながります。
特にプラスチックごみの削減に寄与し、海洋汚染や地球温暖化といった深刻な環境問題の解決策の一つです。
プラスチックごみの問題は海洋生態系に悪影響を及ぼすだけでなく、鉱物資源の枯渇や温室効果ガスの増加とも関連しているため、世界中で問題視されています。
モノマテリアル化によりリサイクル工程が簡単になるため、廃棄物の再利用率向上が期待できます。
さらにモノマテリアル化により使用される素材の量を削減することで、化石燃料の採掘や輸送に伴う環境負荷も低減されます。
例えばアルミ箔を使用しているパッケージをモノマテリアルに変更することで、製造時のCO2排出量を削減することができます。
品質の向上が期待できる
モノマテリアル化には環境への配慮だけでなく、製品の品質向上も期待できます。
モノマテリアルは単一の素材で構成されており、リサイクルプロセスにおける素材の混合を防ぐことができるためです。
循環型社会の実現に貢献できる
モノマテリアルは、循環型社会の実現に貢献できるメリットがあります。
一種類の材料で製品を作ることでリサイクルが容易になり、廃棄物の分別処理が簡単になります。
これによりリサイクル率が向上し、廃棄物の最終処分量が減少します。
さらに再利用可能な材料を使用することで、新たな資源の採取が減り、環境保護につながります。
企業や消費者が積極的にモノマテリアル化を進めることで、持続可能な社会の形成が加速されるでしょう。
資源の節約になる
モノマテリアル化は、資源の節約にも大きなメリットがあります。
一種類の材料で製品を作ることで製造プロセスが簡略化され、エネルギーやコストの削減が期待できます。
また同じ材料を再利用することで、新たな原材料の必要性が減少し、天然資源の消費を抑えることが可能です。
一度使用された材料を再度循環させることで、持続可能な資源利用が促進され、経済的にも環境的にも大きなメリットが得られるでしょう。
モノマテリアル化のデメリット

モノマテリアル化のデメリットとして、以下が挙げられます。
- 適切なリサイクル施設が少ない
- コストが高くなる
- 新しいシステムの開発が必要
- 機能性が制限される
- 消費者の認知度が低い
ここでは上記5つのデメリットについてそれぞれ解説します。
適切なリサイクル施設が少ない
モノマテリアル化のデメリットの一つとして、適切なリサイクル施設が少ないことが挙げられます。
特に再生可能な特定の素材を効率的に処理できる施設は、地理的に偏っていることが多いです。
リサイクルを効率的に行うためのインフラが十分に整っていない地域では、リサイクルのために長距離輸送が必要となり、結果として環境への負荷が増加する可能性もあります。
コストが高くなる
モノマテリアル化には、コストが高くなるデメリットもあります。
単一素材で製品を作成するためには、その素材の構成や加工方法を工夫しなければならず、そのための研究開発費用がかかります。また既存の複数素材を利用した製品からの生産ラインを変えるためには、多くの場合、大規模な設備投資が必要となります。
このようにモノマテリアル化する際に一時的に高コストが発生し、企業の経済的な負担が増加する可能性があります。
新しいシステムの開発が必要
モノマテリアル化を推進するためには、既存の生産およびリサイクルシステムを見直し、さらに新しいシステムを開発する必要があります。
このようなシステムの改変と開発は、企業にとって大きな投資を必要とし、初期費用が高額になることが予想されます。
また新システムの導入によって生じるオペレーション面での問題なども考慮する必要があるでしょう。
機能性が制限される
モノマテリアル化において、製品の構成素材を単一の素材に限定することにより、製品の機能性が制限される可能性があります。複数の素材を使用することで得られる多機能性は、モノマテリアル化すると同様の機能を保つことが難しくなる恐れがあるのです。
例えば製品の包装材料に使用されるPETやアルミ箔、PP(ポリプロピレン)などは以下のような機能の違いがあります。
- PET:耐熱性、透明性
- アルミ箔:酸素・水蒸気のバリア性、遮光性
- PP:強度、耐熱性、耐薬品性
マルチマテリアル製品は、上記の機能を持つ素材を複数組み合わせて使用することで、包装材料としての機能を保っているのです。
モノマテリアル化することによる機能性の制限は、包装材料のように必要な機能が高かったり、多かったりする製品にとっては大きなデメリットとなります。
消費者の認知度が低い
モノマテリアル化は環境保護に寄与するものですが、まだまだ一般消費者の認知度が低いデメリットがあります。
日本では2019年に「プラスチック資源循環戦略」、2021年には「マテリアル革新力強化戦略」を策定し、「リユース・リサイクルを前提とした材料・製品設計技術」ではモノマテリアルの使用方針も示されています。
しかし消費者は製品が持つ環境負荷の低減効果やリサイクルの容易さについて十分に理解していない場合が多いため、消費者の認知度を高めるための取り組みが必要といえるでしょう。
まとめ
モノマテリアルとは、1種類の素材や原料からできているものを指し、複数の素材から構成されるマルチマテリアルと対になるものです。
モノマテリアルはリサイクルの容易化や環境負荷の低減、品質向上などさまざまなメリットがあります。
しかしまだ認知度が低かったり適切なリサイクル施設が少なかったりと、デメリットも少なくありません。
株式会社カナエでは、各分野に対応したモノマテリアル製品を取り扱っており、モノマテリアルPTP、チャック付きモノマテリアルパウチ、モノマテリアルポーション、モノマテリアル滅菌袋などのご紹介が可能です。
環境に配慮したパッケージをご検討中でしたら、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
本記事については一般的な内容であり、当社の製品・サービスについて説明するものではありません。
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