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医薬品のパッケージデザインのポイントとは?注意点や表現要素について解説

医薬品のパッケージデザインのポイントとは?注意点や表現要素について解説

食品などのパッケージデザインと異なり、医薬品のパッケージには医薬品ならではのデザインが求められます。

例えば、医療過誤を防ぐためのデザインや在庫管理業務を補助するための工夫が必要となります。

この記事では、医薬品パッケージデザインにおいて、注意すべき点について解説します。医薬品パッケージデザインにおける表現要素やデザインする上で考慮すべきポイントもまとめているため、参考にしてみてください。

医薬品パッケージの種類

医薬品パッケージの種類

私たちがよく目にする医薬品には以下の2つの種類があります。

  • OTC医薬品
  • 医療用医薬品

ここでは上記2つについてそれぞれ解説します。

OTC医薬品

OTC医薬品とは、医師の処方箋がなくても店頭で買える一般用医薬品のことです。OTCとは、「Over The Counter」の略です。

ドラッグストアなどで扱われるもので、専門知識のない一般消費者が直接手に取って選ぶため、パッケージのデザインは重要なポイントになります。

OTC医薬品パッケージのデザインには服薬順守(服薬コンプライアンス)の啓蒙や誤認防止、医薬品の有効性・安全性の確保などの役割があります。

一般消費者に手に取ってもらえるよう、箱のデザインやキャッチコピーなどの表現力も必要です。

医療用医薬品

医療用医薬品とは、医師の処方箋が必要な医薬品のことです。

医療機関や調剤薬局で扱われるもので、OTC医薬品とは異なり、取り扱いはより慎重に行わなければならないものあり、パッケージデザインにも工夫が必要になります。

医療用医薬品パッケージには、具体的に以下のような役割があります。

  • 医薬品の有効性・安全性の確保
  • 服薬コンプライアンスの啓蒙
  • 類似品との取り間違いを防止する
  • 在庫管理がしやすいよう工夫する
  • 未開封・開封済みの違いが一目でわかる

医療用医薬品パッケージには、調剤包装や販売包装、元梱包装ごとに、バーコード(GS1データーバー)が表示されており、製品管理や投薬管理の際に利用されています。

また医療用医薬品パッケージにはさまざまな包装資材を用いたものや、包装形態があり、それぞれの特徴は以下の通りです。

PTP(Press Through Pack)包装プラスチック成形品とアルミ箔などの押出性の良い材料を用いたもので、カプセル剤や錠剤などを直に包装する。ブリスター包装の一種。
SP(Strip Package)包装2枚の材料に錠剤やカプセル剤、散剤、顆粒剤などの薬剤を挟み込み、その周囲を接着したもの。ストリップ包装とも呼ばれる。
ピロー包装袋状の包装の一種で、一次包装のみで品質確保が困難な場合に使用される。
ブリスター包装プラスチックまたはアルミ箔のシートを加熱成形して作ったくぼみの中に1個または複数個の製剤を入れ、アルミ箔で覆って周囲を接着した包装。カプセル剤、錠剤、充填済みシリンジ剤などで用いられる。
チャイルドレジスタンス包装小児の誤飲事故防止を目的とした包装。
タンパーレジスタント包装無意識に扱った場合や悪意を持っていたずらした場合に危険が生じないように工夫した包装。
防湿包装防湿機能を持つ材料を用いて、医薬品が湿気による影響を受けないように工夫した包装。必要に応じて乾燥剤を入れる場合もある。
ガスバリア包装目的とする気体の透過を抑制する機能を持った包装。
分包品1回の使用量ごとに包装したもの。

医薬品に適した包装資材が使われます。

医薬品のパッケージデザインの注意点

医薬品のパッケージデザインの注意点

医薬品のパッケージデザインをする際の注意点としては、医薬品医療機器等法や業界ガイドラインに沿って、決められた表示項目を守ることが重要です。

またOTCと医療用とでは、販売形態が違うこともあり、求められる内容も変わってきます。

今回は以下の2つの注意点について、それぞれ解説します。

  • 情報に間違いがないようにする
  • 視認性を高める

情報に間違いがないようにする

医薬品は患者さんの生命や健康に直結するため、医薬品のパッケージデザインに記載する情報には間違いがないように徹底する必要があります。

万が一記載されている情報に1文字でも間違いがあれば、場合によっては回収につながることもあります。成分、用法、用量、副作用、保管方法など、あらゆる情報が明確に正しく記載されていなくてはいけません。

特にOTC医薬品パッケージの場合、医療用語や薬学的な説明については、専門知識がない人でも理解できるような平易な表現を使うことが求められます。

誤字脱字や不明瞭な記述があると、それが患者の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、表示をする際にはダブルチェックやプロによる校正を受けるなどの対策をしっかりと取ることも必要になるでしょう。

また、規制当局のガイドラインや要件に厳格に従うことも不可欠となります。

視認性を高める

医薬品のパッケージデザインでは、視認性を高める必要があります。

視認性は医療過誤を防ぐために重要な要素で、具体的には医薬品の取り違いや患者さんの飲み間違いなどが挙げられます。

似た名前の医薬品の取り違いを防ぐための工夫例は以下の通りです。

  • 含量表示を薬の名称よりも大きく表示する
  • 文字やパッケージの色ではっきり区別する
  • 開封して目に入る場所に『類似名あり』と大きく表示する

また医療用医薬品パッケージだけでなく、OTC医薬品パッケージでも視認性は重要です。

特に、高齢者や視力の弱い人々にとっては、文字が小さすぎる場合やコントラストが低い場合、情報を正しく読取ることが困難になります。重要な情報は大きなフォントサイズと識別しやすい色合いで表示し、背景と十分なコントラストを持つことが推奨されます。

これにより患者さんの飲み間違いが起こるリスクが減り、安全性の向上につながります。

医薬品のパッケージデザインは視認性が重要

医薬品のパッケージデザインは視認性が重要

医薬品のパッケージデザインは以下のような理由から視認性が重要です。

  • より強く注意喚起を促すため
  • 在庫管理業務を補助するため

ここでは上記2つの理由についてそれぞれ解説します。

より強く注意喚起を促すため

医薬品のパッケージデザインにおいて重要となる視認性は、医療過誤を防ぐために必要なものです。パッケージデザインを工夫し、より強く注意喚起を促すことで、医療過誤が起きるリスクを低減できます。

例えば同じ医薬品でも『3mg』や『5mg』など含量が異なるものがあり、含量のちょっとした違いの飲み間違いも健康に影響を及ぼす恐れがあります。この場合は、対応策として含量表示を薬の名称よりも大きく表示する方法が考えられます。含量表示を大きく表示することで、医療従事者による医薬品の取り違いを防ぐことができるでしょう。

また似た名前の医薬品の取り違いを防ぐためには、薬棚に並んだときに正面に来る箱の側面部分で識別できるよう、文字やパッケージの色などではっきり区別することが大切です。

患者さんの健康を守るためには、より強く注意喚起を促すための視認性の高いパッケージデザインが求められます。

在庫管理業務を補助するため

医薬品のパッケージデザインにおける視認性が重要な理由として、在庫管理業務を補助するためという点も挙げられます。

在庫管理業務を補助するためのパッケージデザインの工夫例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 箱に開封済みであることが一目で分かるデザイン
  • ピロー袋の残数がいくつか記載できる管理表を付属
  • サイドフラップや蓋の内側に製品名・含量規格・包装単位を記載

上記のような工夫を施すことにより、医療機関や調剤薬局での医薬品の在庫管理の効率化を図ることができます。

医薬品のパッケージデザインにおける表現要素

医薬品のパッケージデザインにおける表現要素

医薬品のパッケージデザインにおける表現要素は以下の4つが挙げられます。

  • 文字情報
  • 図形情報
  • 色情報
  • 印刷

ここでは上記4つの要素についてそれぞれ解説します。

文字情報

文字情報に含まれる要素としては、以下のようなものがあります。

  • 文字の種類
  • 文字情報が占める割合
  • 書体の種類
  • オリジナル書体
  • 情報の内容

日本の医薬品パッケージでは、パッケージ正面に対する文字情報の占有率が高く、商品名にオリジナル書体が採用されているケースも珍しくありません。また商品名に企業名や成分、薬剤名が含まれる場合もあります。

図形情報

図形情報に含まれる要素は以下の通りです。

  • 効用イメージ
  • 薬剤イメージ
  • その他のイメージ

医薬品パッケージには効用イメージや薬剤イメージを掲載するケースが多いです。例えば胃腸薬のパッケージでは、胃をイメージしたイラストや図形がデザインされることがあります。

色情報

色情報に含まれる要素は以下の通りです。

  • 色数
  • 背景色の有無
  • 彩色されている面積

日本の医薬品パッケージでは、多数の色が用いられています。

崇城大学薬学部医療薬剤学研究室(吉岡祐三郎、山﨑啓之、瀬尾 量)の『医療用医薬品外箱の主要色相とカラーイメージに関する調査分析』によると、薬効によって外箱の色相に以下のような違いがみられました。

順位向精神薬
(N=10)
消化器系
(N=12)
循環器系
(N=7)
骨粗鬆症薬
(N=2)
呼吸器系
(N=7)
1黄(4)青(4)
緑(4)
青(3)ピンク(2)青(5)
2青(3)赤(2)
黄(2)
赤(2)緑(1)
黄(1)
3赤(2)緑(1)
黄(1)
4緑(1)

出典:医療用医薬品外箱の主要色相とカラーイメージに関する調査分析

また使われる色によって以下のようなイメージの違いがあります。

  • 青色:浄化、癒し、解放感など
  • 緑色:自然、恒常性、安心感、リラックスなど
  • 赤色:血液、生命、エネルギーなど

医薬品のパッケージデザインでは、上記のような色のイメージなども考慮する必要があるでしょう。

印刷

印刷には以下のような要素が含まれます。

  • コーティング
  • 特殊印刷(箔・型押しなど)
  • 特色印刷
  • 特殊な素材の有無

また印刷方法には以下のようなものがあります。

  • オフセット印刷:写真や色の再現性に優れた印刷方法
  • オフセットUV印刷:油性印刷と比べてインキの乾燥時間を短縮できる印刷方法
  • オンデマンド印刷:デジタルデータをCMYKの組み合わせで表現する印刷方法
  • グラビア印刷:凹版印刷の一つで高精度な再現性がある印刷方法
  • フレキソ印刷:凸版印刷の一つでムラなくツヤのある仕上がりになる印刷方法
  • シルク印刷:曲面にも印刷できる印刷方法

印刷する素材に適した方法を選択することが大切です。

まとめ

医薬品パッケージデザインには、OTC医薬品パッケージと医療用医薬品パッケージの2種類があります。

共通した注意点は、情報に間違いがないようにすることと視認性を高めることです。

また視認性を高めることは、医療過誤を防いだり在庫管理補助業務を補助したりするために重要な要素になります。

医薬品のパッケージデザインには文字情報・図形情報・色情報・印刷などの要素があるため、医薬品の薬効やイメージに合わせたデザインを検討することが大切です。

株式会社カナエでは、医薬品分野向けの包装を取り扱っており、単一素材で構成されたモノマテリアルPTPなど、ニーズに応じたパッケージのご提案が可能です。

またパッケージの企画・設計から試作・評価までさまざまな課題を解決する『包装技術開発センター』にて、パッケージのお悩み解決にご協力させていただきます。ぜひ気軽にお問い合わせください。

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