
医療器具を滅菌する際に使用する滅菌バッグ(パック)ですが、閉じ方が不適切だった場合正しく滅菌処理できない恐れがあります。
滅菌バッグをきちんとシールするポイントは、ヒートシーラーを正しく使うことです。
この記事では、滅菌バッグの正しいシール方法について詳しく解説します。滅菌バッグをシールする際の注意点や滅菌方法の種類などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
滅菌バッグはヒートシーラーでシールする方法が一般的

滅菌バッグは医療機器の包装材として広く使われているもので、ヒートシーラーで閉じる方法が一般的です。
ここでは滅菌バッグとヒートシーラーについてそれぞれ解説します。
滅菌バッグとは
滅菌バッグとは、医療器具を滅菌機にかける際に使用する包装材のことです。片面がフィルム面、もう片面がフィルター面となっています。
製品により仕様は異なりますが、インジケーターと呼ばれるものがついているものもあり、滅菌バッグに入れた器具が滅菌工程を経たか目視することが可能です。
また滅菌バッグには、自由な長さに切って使用できるロールタイプと決まったサイズにあらかじめカットされている袋タイプがあります。
袋タイプもロールタイプも、内容物を滅菌バックに入れたあとは、ヒートシーラーなどを用いて密封しなければなりません。
ヒートシーラーとは
ヒートシーラーとは、袋の開け口を熱と圧力でシールする機械のことです。
ヒートシーラーは主に食品を長期保存する際に使用されるものですが、医療機関でも滅菌バッグを封止めする際に使われます。
シール可能な袋は多岐にわたりますが、使用する袋の形状と厚みに対応したシーラーを選ぶ必要があります。
滅菌バッグは正しくシールされていることが重要
滅菌バッグは正しくシールされる必要があります。
滅菌バッグを使用した滅菌工程では、滅菌剤である蒸気やガスを導入して高圧状態を維持し、その後一定時間経過後に排気して空気置換を行います。
この工程では滅菌器内で圧力が激しく変化するため、滅菌バッグに大きな圧力負荷がかかります。そのため滅菌バッグが正しくシールされていなければ、滅菌工程中に滅菌バッグが破裂してしまう恐れがあります。
滅菌バッグが破裂すると当然無菌性を保持できなくなるため、滅菌処理を正しく行うことができません。
滅菌バッグの正しい使い方

滅菌バッグの正しい使い方のポイントは以下の6つが挙げられます。
- 器材を滅菌バッグに入れる
- ヒートシーラーで圧着する
- 滅菌器に入れる
- 保管する
- 開封して使用する
- 適切な方法で廃棄する
ここでは上記6つのポイントについてそれぞれ解説します。
器材を滅菌バッグに入れる
器材を滅菌バッグに入れます。必要に応じて包装内部用インジケーターも一緒に入れましょう。
滅菌バッグと包装内部用インジケーターは、滅菌方法に適したものを使用してください。
ヒートシーラーで圧着する
滅菌バッグを閉じてヒートシーラーで圧着します。
ヒートシーラーにはロータリー型シーラーとインパルス型シーラーの2種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
ヒートシーラーの種類 | 特徴 | メリット |
---|---|---|
ロータリー型 | コンベア式でテンポよく圧着できる | 比較的大型で、連続して大量に圧着可能 |
インパルス型 | 一つずつ上からバーを押して圧着する | コンパクトなものもある |
自社の環境に適したものを導入すると良いでしょう。
滅菌器に入れる
ヒートシーラーで圧着して封をした滅菌バッグを滅菌器に入れます。
滅菌器内は滅菌剤が浸透しやすいようにする必要があるため、詰め込みすぎに注意しましょう。
保管する
滅菌が完了した滅菌バッグを所定の場所で保管します。
滅菌の有効期限は施設により判断基準が異なるため、施設で設定した期限内に使用しましょう。
開封して使用する
器具に合った無菌操作で滅菌バッグを開封して使用します。
患部に触れたり挿入したりする部分は素手で触れないようにしましょう。
適切な方法で廃棄する
滅菌バッグは一度使用すると再利用できないため、適切な方法で廃棄する必要があります。
施設によって規定が異なるため、規定に沿った方法で廃棄しましょう。
滅菌バッグの閉じ方の注意点

滅菌バッグの閉じ方に関する注意点は以下の5つです。
- 劣化したヒートシーラーを使わない
- ヒートシーラーに器材が挟まっていないか確認する
- ヒートシーラーの熱源の位置を確認する
- 適正な温度に設定する
- 十分なクーリングタイムを取る
ここでは上記5つの注意点についてそれぞれ解説します。
劣化したヒートシーラーを使わない
正しくシールできない恐れがあるため、劣化したヒートシーラーは使わないようにしましょう。
ヒートシーラーが経年劣化するとシールバーの圧力が低下し、シール強度が低下してしまう恐れがあります。
またテフロンシートやヒーター線、テフロンテープ、シリコンゴムなどは消耗品のため、劣化してきたら交換してください。
ヒートシーラーに器材が挟まっていないか確認する
滅菌バッグを圧着する際は、ヒートシーラーに器材が挟まっていないか確認しましょう。
器材が挟まった状態で圧着してしまうと、シールバーがへこんでしまう恐れがあります。
シールバーがへこむとその部分が上手く圧着できず、滅菌バックを密封できなくなってしまう可能性があるため注意してください。
ヒートシーラーの熱源の位置を確認する
ヒートシーラーの熱源の位置を確認しましょう。
ヒートシーラーは機種によって熱源の位置が異なるため、使用する機種の取扱説明書で確認してください。
熱源のある位置に滅菌バッグのフィルム面をセットします。
ヒートシーラーの熱源の位置に合わせて正しく使用することで、滅菌バッグ本来の効力をしっかり発揮できます。
適正な温度に設定する
ヒートシーラーを使用する際は、適正な温度に設定しましょう。
滅菌バッグをしっかりシールするためにはシールバーすべての面で、正しい温度で、かつ正しい圧力で密封することが大切です。
ヒートシーラーの温度が上がりきる前に使用したり、滅菌バッグの推奨温度と異なる温度でシールしてしまうと、圧着が不十分になる可能性があります。そうするとシール強度が弱くなり、滅菌工程中の圧力変化に耐えきれず滅菌バッグが破裂してしまう恐れがあるのです。
滅菌バッグの推奨温度を確認し、しっかり温度が上がりきってからヒートシーラーを使用しましょう。
十分なクーリングタイムを取る
ヒートシーラーを使用する際は、十分なクーリングタイムを取ることも大切です。
クーリングタイムは圧着したフィルムが冷めるまでの時間のことで、綺麗にシールするために必要なクーリングタイムは製品によって異なります。シール後、圧着部が熱いときに外力がかかると、シール剥がれやシワなどが発生し、シール不良となる可能性があります。
またシールとシールの間隔は15秒ほど時間を空けると良いでしょう。時間を待たずに連続して使用した場合、蓄熱により消耗品の寿命が短くなってしまいます。
滅菌方法の種類

滅菌方法には以下のような種類があります。
- オートクレーブ
- 乾熱滅菌
- エチレンオキサイドガス滅菌
- 過酸化水素ガスプラズマ滅菌
ここでは上記4つの種類についてそれぞれ解説します。
オートクレーブ
オートクレーブは高圧蒸気滅菌器を用いた滅菌方法です。
高圧下で、121℃の水蒸気に20分以上の条件にて暴露することで、非常に高い滅菌効果を得ることができます。
この方法は金属製品、ガラス器具、培養液など、耐熱性のある材料に適しています。
オートクレーブは比較的低コストで信頼性が高く、幅広い分野で使用されていますが、プラスチック製品やゴム製品などの熱に弱い材料には適用できません。
乾熱滅菌
乾熱滅菌は、高温の乾燥状態で微生物を死滅させる方法です。一般的には160~200℃で30分から2時間の加熱が行われます。
乾熱滅菌はオートクレーブよりも長い時間と高温が必要ですが、ガラス器具や金属器具、粉末状の物質などに適している点が特徴です。
この方法は湿気を嫌う物品や鋭利な器具の滅菌に有効で、一部の医療機器や実験器具に利用されます。
エチレンオキサイドガス滅菌(EOG滅菌)
エチレンオキサイドガス滅菌は、エチレンオキサイドガスを使用して滅菌する方法です。
この方法は50~60℃前後で行われるため、比較的熱に弱い材料や電子機器の滅菌に適しています。
エチレンオキサイドガスは強力な殺菌作用を持ち、あらゆる種類の微生物を効果的に死滅させることができます。
ただしガスは毒性が高く、残留物が健康に有害であるため、使用後の適切な換気とガスの除去が必要です。
また滅菌後のエアレーションに時間がかかり、コストも高いため、他の滅菌法が適用できない場合に限定して使用される場合が多いです。
過酸化水素ガスプラズマ滅菌
過酸化水素ガスプラズマ滅菌は、過酸化水素ガスをプラズマ状態にすることで滅菌する方法です。
この方法は低温(45~55℃)で行われ、迅速かつ安全に滅菌することができます。
過酸化水素ガスは分解されると水と酸素になるため環境への影響も少なく、残留毒性がない安全性の高い方法です。
過酸化水素ガスプラズマ滅菌は、プラスチックや電子機器、光学機器など、熱や湿気に敏感な物品の滅菌に適しています。
滅菌した滅菌バッグの有効期限

ここでは滅菌した滅菌バッグの有効期限の考え方について解説します。
原則的に有効期限はない
滅菌した滅菌バッグは、適切に保管されていれば原則的に有効期限はありません。
つまり適切な保管により滅菌状態がきちんと維持されていれば、滅菌は無期限で有効となるのです。
滅菌状態が破綻してしまう事象としては、以下が挙げられます。
- 破れたとき(穴が開いたとき)
- 落としたとき
- 濡らしたとき
- シール部分が開いているとき
- 滅菌バッグにシミや汚れが付着しているとき
上記のような事象が発生していると、滅菌袋内部の無菌状態が保証できなくなる場合があり、その際は新しい滅菌袋に入れ替えるなどをして、再滅菌を行う必要があるでしょう。
施設ごとに使用期限を設けるのが一般的
滅菌した滅菌バッグに原則有効期限はありませんが、施設ごとに使用期限を設けることが一般的です。
使用期限の考え方には『時間依存型無菌性維持(TRSM)』と『事象依存型無菌性維持(ERSM)』の2つがあります。
名称 | 考え方 | 例 |
---|---|---|
時間依存型無菌性維持 (TRSM) | 一定の時間経過により滅菌が破綻する | 滅菌バッグで包装した器材は6か月など |
事象依存型無菌性維持 (ERSM) | 滅菌物が汚染される可能性がある事象の発生により滅菌が破綻する | 滅菌バッグを落としたとき 滅菌バッグが破れたときなど |
どちらの考え方をもとに期限を設定するかは施設によりますが、日本では時間依存型無菌性維持(TRSM)の考え方に則って1~6ヶ月ほどで期限を設定する施設が多いです。
まとめ
滅菌バッグは医療器具を滅菌機にかける際に欠かせないものですが、滅菌処理を正しく行うためには正しくシールすることが重要です。
滅菌バッグが正しくシールされないと、滅菌工程中に滅菌バッグが破裂してしまう恐れがあります。
滅菌バッグを閉じる際は劣化したヒートシーラーは使用しない、熱源の位置を確認する、適正な温度に設定する、十分なクーリングタイムを取るなどのポイントを押さえましょう。
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