
薬の包装によく見られるPTPシートですが、実は誤飲事故が多発していることをご存知でしょうか。
主に高齢者や子供を中心に、薬を包装から取り出さずにシートごと飲み込んでしまうことがあるのです。
この記事では、PTPシートの誤飲の可能性について詳しく解説します。
誤飲した際の症状や予防方法もまとめているため、参考にしてみてください。
目次
PTPシートの特徴とメリット・デメリット

PTP(Press Through Package)シートは主に医薬品の包装に使用されているものです。
錠剤やカプセル剤をプラスチックとアルミのフィルムで包んだものが多く、プラスチック部分を強く押し出すことで中に収納されている薬剤を1錠ずつ取り出すことができます。
ここではPTPシートの特徴とメリット・デメリットについて詳しく解説します。
PTPシートの特徴
PTPシートはプラスチックとアルミニウム箔を使用した包装で、個別に包装された錠剤を簡単に取り出せるように設計されています。
またPTPシートは薬の変質の原因となり得る外部の湿気や光、酸素の影響を防ぐことができます。
これにより薬剤の品質保持期間が延び、患者さんに提供する薬剤の有効性が確保されます。
PTPシートは多くの医薬品メーカーが採用している標準的な包装形式となっており、医薬品の保管、取り扱い、輸送が容易である点も特徴と言えるでしょう。
PTPシートのメリット
PTPシートの主なメリットとしては以下が挙げられます。
- 薬の変質を防ぐ
- 錠剤やカプセル剤を取り出しやすい
- 携帯や保管に便利で破損しにくい
PTPシートの主なメリットの一つは、薬剤の品質保持に優れている点です。
湿気や光、酸素から薬剤を保護し、長期間にわたって薬剤の品質を維持することができます。
さらにPTPシートは衛生的で、開封するまで薬剤に触れることがないため、汚染のリスクが低減されます。
また錠剤やカプセルを一つずつ簡単に取り出せるため、患者にとっても使いやすい包装といえるでしょう。
加えてPTPシートは輸送や保管が容易で破損しにくいメリットもあり、これにより医薬品の物流や在庫管理が効率化されます。
PTPシートのデメリット
PTPシートの主なデメリットは以下の通りです。
- 誤飲などの事故がある
- 服薬管理が困難になる場合がある
- リサイクルが難しい
PTPシートは1錠分ずつシートを切り離すことができるものもありますが、(日本国内では1錠ずつに分割できないように、分割線を横方向のみに入れることになっています)このため錠剤を誤ってシートごと飲んでしまうケースがあるのです。
誤飲は高齢者や子供に多く、場合によっては手術が必要となることもあります。
またPTPシートは1錠ずつ包装されているため、1回の服用タイミングに服用する錠数を確認しながら服用しなくてはいけません。服用する薬の種類が多い場合や服用方法が複雑な処方の場合、飲み忘れなどが生じる可能性があります。
さらにPTPシートはプラスチックとアルミ箔で構成されているため、リサイクルするにはそれぞれを分離する必要があります。
特に近年はプラスチックの焼却処分による環境への負荷が懸念されており、リサイクルを推進する動きも増えてきているため、リサイクルしにくいという点は大きなデメリットです。
PTPシートは誤飲の可能性がある

薬を取り出しやすいメリットがあるPTPシートですが、薬を取り出さずにシートごと誤飲してしまう重大な事故が発生することがあります。
この誤飲事故は高齢者や子供に多く、消化管異物として発見されるケースが一般的です。
PTPシートの誤飲は高齢者や子どもに多い
PTPシートの誤飲は高齢者や子どもに多く見られます。
しかしそれ以外の年代でも誤飲事故の報告があるため、年齢にかかわらず、どのような人でも誤飲してしまう恐れがあります。
高齢者や子供に該当しない人でも、気が緩んでいると誤飲の可能性があるため注意が必要です。
PTPシートを誤飲してしまう原因
PTPシートを誤飲してしまう主な原因は、シートを1錠分ずつ切り離すことです。
PTPシートを1錠分ずつ切り離すことでちょうど飲みやすい大きさになるため、薬を取り出さずにシートごと誤飲する事故につながる可能性が高くなります。
以前は1錠分ずつ切り離せるように縦横にミシン目が入っていましたが、1996年に誤飲事故が問題になり、現在は横方向にのみミシン目が入るようにしています。(製品の特性上、縦方向のみも可)
ミシン目に沿って切れば2〜3錠分ずつしか切り離せず、切り離した際のサイズも以前より大きいため誤飲のリスクを低減しています。
しかしPTPシートが改良された現在でもハサミで1錠ずつ切り離してしまう方が少なくないため、誤飲事故が起きることがあるのです。
PTPシートを誤飲・誤嚥したときの症状

PTPシートを誤飲・誤嚥したときに現れる症状としては以下のようなものが挙げられます。
- 咽頭や食道の違和感
- 消化管を傷つける
- 呼吸困難
ここでは上記3つの症状についてそれぞれ解説します。
咽頭や食道の異物感
PTPシートを誤飲・誤嚥した直後に、咽頭や食道に違和感や痛みが生じます。具体的には異物感や嚥下障害、胸痛などの症状が現れるケースが多く見られます。
しかし中には誤飲しても自覚症状がなく、誤飲したことに気付かない場合もあります。
消化管を傷つける
切り離されたPTPシートは角が鋭利になっているため、消化管を傷つける恐れがあり危険です。
食道穿孔(食道に穴が開いたり裂創ができたりする状態)が起こると縦隔炎の症状が現れることがあり、大腸穿孔が起こると開腹手術が必要となる場合もあります。大腸穿孔は腹痛、発熱、下血、腹部膨満などが主な症状です。
誤飲直後は自覚症状が見られず、腹痛による開腹手術が必要となった際にPTPシートが発見されるケースもあります。
またPTPシートはX線を透過するため、検査をしても発見が遅れてしまう場合があります。
呼吸困難
PTPシートを誤嚥すると呼吸困難に陥ることもあります。
急性期の症状が落ち着くと咳などの症状が治まり、無症状になります。
PTPシートを誤飲・誤嚥したときの対処法

PTPシートを誤飲・誤嚥したときの対処法としては以下の3つが挙げられます。
- 誤飲したものと量を確認する
- むやみに吐かせない
- すぐに医療機関を受診する
ここでは上記の対処法についてそれぞれ解説します。
誤飲したものと量を確認する
PTPシートを誤飲した場合、まず何をどのくらい誤飲したのかを確認することが重要です。
具体的には誤飲したPTPシートのサイズや形状、誤飲した薬の種類や数などを把握する必要があります。
これにより医療機関に正確な情報を伝え、適切な対応を受けられるようになります。
飲み込んだPTPシートが原因で食道や大腸に傷がつく可能性があるため、誤飲してしまったらすぐに確認しましょう 。
むやみに吐かせない
誤飲した際にむやみに吐かせることは避けましょう。
無理に吐かせることで、PTPシートが食道や喉を傷つけるリスクが高まります。
また吐かせる行為自体がさらに誤嚥を引き起こす可能性があり危険です。
角が鋭利なPTPシートの場合は吐かせることで逆に危険が増すため、適切な処置は医療機関に任せましょう。
すぐに医療機関を受診する
上記については一般論であるため、誤飲してしまったら直ちに医療機関を受診することが重要です。
早期に医師の診察を受けることで、適切な処置が行われ、重篤な症状を防ぐことができます。
特に呼吸困難や激しい痛みがある場合は緊急対応が必要です。
医療機関ではX線や内視鏡を用いた検査が行われ、状況に応じて手術が必要になることもあります。
誤飲事故が起きた際にすぐに受診できるよう、休日や夜間に受診できる医療機関を把握しておくことが大切です。
PTPシートの誤飲の予防法

PTPシートの誤飲を予防する方法としては以下が挙げられます。
- PTPシートを切り離さない
- ひとりのときに薬を飲ませない
- 薬を一包化する
- 薬ケースに保管する
- 食べ物を入れる容器に薬を保管しない
- 高齢者や子どもの手の届くところに保管しない
- 薬を取り出したPTPシートをすぐに処分する
ここでは上記7つの予防法についてそれぞれ解説します。
PTPシートを切り離さない
PTPシートは切り離したときに誤飲事故が起こりやすくなるため、切り離さずに保管しましょう。
そのまま保管しておくことで、誤飲を予防できます。
ひとりのときに薬を飲ませない
高齢者や子供が薬を服用する際には、必ず誰かが付き添うことが大切です。
特に高齢者の場合や1回分の薬の量が多い場合、PTPシートから薬を取り出さずに誤飲してしまうことがあります。
誤飲や誤嚥のリスクを減らすために、家族や介護者が見守っているときに薬を飲ませるようにしましょう。
薬を一包化する
一包化とは1回分の薬を一つのパッケージにまとめる方法で、服薬の利便性と安全性を向上させます。
これにより複数の薬を一度に取り出すことができ、誤飲のリスクを軽減できるでしょう。
特に高齢者や複数の薬を服用する人にとっては、一包化が誤飲防止に効果的です。
一包化することで服薬管理が容易になり、安心して薬を服用できます。
ただし、一包化に際しては、薬剤師の適切な判断が必要となります。
食べ物を入れる容器に薬を保管しない
食べ物を入れる容器に薬を保管することは非常に危険です。
特に高齢者や子供がいる家庭では、誤飲のリスクが大幅に増加します。
食器や食品と同じ場所に薬を保管することで、誤って薬を食品と勘違いしてしまう可能性があるためです。
薬は専用の薬ケースや薬箱に保管し、食品とは完全に分けて保管することが重要です。
また薬の容器や保管場所には明確なラベルを貼り、誰が見ても薬であることがすぐにわかるようにするのも効果的な予防法となります。
高齢者や子どもの手の届くところに保管しない
薬を高齢者や子どもの手の届くところに保管することは避けましょう。
特に小さな子どもは、興味本位で薬を触ったり口に入れたりする可能性があります。
また高齢者も視力や判断力の低下により誤って薬を手に取ることがあります。
そのため薬は高い場所や鍵のかかるキャビネットに保管し、子どもや高齢者の手が届かないようにすることが大切です。
薬を取り出したPTPシートをすぐに処分する
薬を取り出した後のPTPシートは、すぐに処分するようにしましょう。
使用済みのシートを放置しておくと、誤って飲み込んでしまうリスクが高まります。
特に小さな子どもや視力の低下した高齢者は、残ったシートを薬と勘違いしてしまう可能性があります。
使用後のシートはすぐにゴミ箱に捨てるか、専用の廃棄容器に入れるようにしましょう。
また廃棄容器には蓋をするなどして、安全に廃棄できるように工夫することも大切です。
まとめ
PTPシートは薬を取り出しやすいメリットがある一方で、誤飲の可能性というデメリットがあります。
PTPシートの誤飲は特に高齢者や子どもに多く見られ、咽頭や食道の異物感が生じるだけでなく、場合によっては消化管を傷つけてしまったり呼吸困難に陥ったりする場合もあり危険です。
誤飲を防ぐための予防方法としては、PTPシートを切り離さない、ひとりのときに薬を飲ませない、薬を一包化するなどが挙げられます。
他にも、取り出しマーク(ケアマーク)の統一表示、添付文書などへの注意喚起の表示と薬剤師からの声掛け、食道や気管を傷つけないように柔らかい素材を使ったPTPの開発、あえて1錠包装にしたものを台紙などで挟み込み、そのままでは飲み込めないようにした台紙包装など、誤飲を防ぐためのさまざまな方法が考えられています。
株式会社カナエでは、高齢者や子供の誤飲を防ぐための包装を多く取り扱っており、PTPシートのマテリアルリサイクルにも取り組んでいます。
包装でお悩みの方は、ぜひ当社までお問い合わせください。
本記事については一般的な内容であり、当社の製品・サービスについて説明するものではありません。
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