
食品包装は単に食品を入れる袋としての役割だけでなく、食品の品質を保持する役割を持つものです。
食品包装には幅広い種類があり、それぞれ性質が異なるため、商品に適した種類を選択する必要があります。
この記事では食品包装の種類について詳しく解説します。
食品包装によく使われる材質や役割についてもまとめているため、参考にしてみてください。
目次
食品包装の主な種類

食品包装の形態で、フィルムを使用したものは以下のようなものがあります。
- ピロー包装
- 深絞り包装
- シュリンク包装
- スキンパック
ここでは上記4つの種類についてそれぞれ解説します。
ピロー包装
ピロー包装は、一枚のフィルムを背中合わせで熱圧着して筒状にし、指定の長さで底部を溶着したものです。
枕の形に似ていることからピロー包装と呼ばれますが、合掌袋と呼ばれることもあります。
包装対象となる製品の形状や長さにとらわれず幅広い業界で用いられるため、様々な包装形態の中では、スタンダードな形と言えるでしょう。
使用される材質は包装対象となる食品により異なりますが、お菓子の外装にはOPP(二軸延伸ポリプロピレン)とCPP(無延伸ポリプロピレン)のラミネートフィルムが用いられることが多いです。
こんにゃくなどの水物にはOPA(二軸延伸ポリアミド)とL-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)のラミネートフィルムが使用されるケースが多いです。
これ以外にも、さまざまな食品に合わせて包装材料を組み合わせることで、包装することが可能となります。
深絞り包装
深絞り包装は、ボトム材とトップ材の2種類のフィルムにより構成される包装です。
内容物に合わせて凹みを作ったボトム材に内容物を入れ、その後にトップ材を上から熱圧着することで包装する仕組みとなっています。内容物に合わせて成型するため、食品の食べやすいサイズに合わせた容器の大きさにできる点が特徴です。
深絞り包装が用いられる食品としては、調理肉やハム、ソーセージなどが挙げられます。
トップ材、ボトム材ともPA(ポリアミド)やL-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)がよく使用されます。
シュリンク包装
シュリンク包装は、熱を加えることで収縮するフィルムを使用して商品の形状にピッタリ合わせて包装するものです。
主に塩化ビニルやPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)などを使ったフィルムが用いられます。
シュリンク包装は商品全体を覆うことができるため、商品の保護や異物混入防止効果がある点が大きなメリットです。
またフィルムは一度破くと修復困難になるため、売り場でのいたずら防止にも役立ちます。
さらに複数の商品を1つにまとめる際にも便利で、冷凍ピザや乳酸飲料、ヨーグルトなどの集積包装によく用いられます。
スキンパック
スキンパックは、商品と台紙の間を隙間なく熱で圧着し、完全に密封・真空包装したものです。
主に干物や肉の包装で用いられる種類で、食品から出る水分(ドリップ)を抑制できるため食品の鮮度を長期間保つことができます。
さらに縦にしても商品の形が崩れないため、商品の保管がしやすいメリットもあります。
食品包装によく使われる材質

食品包装によく使われる材質として以下が挙げられます。
- OPA(二軸延伸ポリアミド)
- HDPE(高密度ポリエチレン)
- LDPE(低密度ポリエチレン)
- L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
- PET(ポリエチレンテレフタレート)
- OPP(二軸延伸ポリプロピレン)
- CPP(無延伸ポリプロピレン)
- PVC(ポリ塩化ビニル、通称:塩ビ)
- PVDC(ポリ塩化ビニリデン)
- AL(アルミ箔)
ここでは上記の材質のそれぞれの特徴について解説します。
OPA(二軸延伸ポリアミド)
OPA(二軸延伸ポリアミド)は耐衝撃性や耐寒性、耐熱性、突き出し強度に優れている特徴があり、幅広い用途で使用される材質です。
主に液体や真空の食品に多く使われており、他素材と合わせてラミネートすることにより冷凍食品やレトルト食品にも対応できます。具体的にはジュースや液体スープ、餅、スライスハム、水産加工食品などの包装によく使われます。
HDPE(高密度ポリエチレン)
HDPE(高密度ポリエチレン)は耐衝撃性、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性、耐寒性、防湿性、密封性に優れている特徴があり、スーパーのレジ袋やロールポリ袋で使用される材質です。
別名「ハイデン」とも呼ばれます。
LDPE(低密度ポリエチレン)
LDPE(低密度ポリエチレン)は耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐衝撃性、耐寒性、防湿性、ヒートシール性に優れている特徴がある材質です。
ポリ袋やごみ袋などによく使用されるだけでなく、シーラント用途で包装によく使われている樹脂であり、製膜されたフィルムとして使用したり、ラミネート加工でフィルムを張り合わせるための樹脂として使用される場合もあります。
別名「ローデン」とも呼ばれます。
L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)は耐衝撃性やヒートシール性に優れている材質で、性質としてはHDPEの物理的強度と、LDPEのシール性の良さを併せ持つものといえるでしょう。
ラミネートフィルムに使用されることが多い点が特徴で、真空包装やガス置換包装、脱酸素剤封入包装、冷凍食品包装など幅広い包装に用いられています。
「リニアローデン」や「LL」ともよばれます。
PET(ポリエチレンテレフタレート)
PET(ポリエチレンテレフタレート)は耐水性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、透明性に優れた材質で、PETボトルに用いられています。
他にも冷凍・ボイル・レトルト食品の包装やL-LDPEやCPPとのラミネート品、コーヒーや香辛料の包装にもよく使用されます。
OPP(二軸延伸ポリプロピレン)
OPP(二軸延伸ポリプロピレン)は耐熱性、防湿性、引張強度に優れた材質です。
一般的に生鮮野菜や果物などの食品包装に用いられており、L-LDPEやCPPなどのヒートシール性の高い材質と組み合わせて活用されるケースが一般的です。野菜や果物の他には、カステラや和菓子、各種水産加工品の包装にも用いられます。
CPP(無延伸ポリプロピレン)
CPP(無延伸ポリプロピレン)は防湿性、耐熱性、ヒートシール性、耐摩耗性に優れた材質です。
麺やパン袋に利用されることが多く、OPPやPETなどと貼り合わせたラミネート袋に活用されるケースも多く見られます。
またラミネート用として活用される中には耐熱性が高いことを利用し、レトルトパウチ包装用途に使用されています。
PVC(ポリ塩化ビニル、通称:塩ビ)
PVC(ポリ塩化ビニル、塩ビ)は伸縮性と引張強度に優れた材質で、硬質タイプと軟質タイプの2種類があります。
主に、キャップシール、シュリンク包装、ラップフィルムに用いられ、硬質・軟質は用途に合わせて使い分けられます。
PVDC(ポリ塩化ビニリデン)
PVDC(ポリ塩化ビニリデン)は防湿性や密封性、保香性、ガスバリア性に優れた材質で、主に食品保存に用いられるラップ素材として多用されています。
他の素材と併用してレトルトパウチに使用されるケースや、ハム・ソーセージ・チーズなどの包装に使用されるケースがあります。
AL(アルミ箔)
AL(アルミ箔)は遮光性、耐熱性、保香性、バリア性に優れた材質で、身近なものでいうとアルミホイルとして幅広い用途に使用されています。
酸素や水分を通さない性質を持つため、脱酸素包装やガス充填包装に使われたり、PETやCPPなどと貼り合わせたラミネートとして活用されたりするケースが多く見られます。
アルミ箔はそのバリア性能を活かして、食品包装全般に利用されています。
食品包装フィルムが持つ4つの役割

食品包装フィルムは主に以下の4つの役割を持ちます。
- 保護機能
- 使用時の利便性を高める機能
- 流通・保管の効率を高める機能
- 情報伝達機能
ここでは上記4つの役割についてそれぞれ解説します。
保護機能
食品包装に求められる役割の一つとして、食品を安全に保護することが挙げられます。
食品を包装することで湿気や衝撃などによる品質の低下を防ぐことができます。
商品によっては光や熱などによって品質が落ちやすいものもあるため、そういったものには遮光性や耐熱性、耐寒性などの機能を付加した包装が用いられます。
使用時の利便性を高める機能
食品包装は使用時の利便性を高める機能も持っています。
例えば電子レンジで温めてそのまま食べられる包装やチャックがついている保存しやすい包装などが挙げられます。
使用時の利便性を高めることにより、消費者が商品を手に取りやすくなるメリットもあります。
流通・保管の効率を高める機能
食品包装は流通・保管の効率を高める機能もあります。
流通・保管の効率を高める具体的な機能としては、以下の4つが挙げられます。
- 荷役:運びやすく持ちやすい
- 保管:積みやすく置きやすい
- 仕分:見分けやすい
- 陳列:並べやすく見分けやすい
商品を保管・陳列しやすい形状の包装にすることで、輸送・保管時のコストや労力の削減が期待できます。
情報伝達機能
食品包装が持つ情報伝達機能とは、商品の包装・パッケージに表記される内容物の説明やバーコードなどです。
食品包装には以下のような情報が表示されます。
- 製造内容
- 品質期限
- アレルゲン表示
- 使用方法
- バーコードなど
上記のほかにも商品のアピールポイントなどをパッケージデザインに反映することにより、競合品との差別化を図り、販売促進効果が期待できます。
必要な情報や競合品との差別化ができる情報を表示し、消費者に伝える役割を担うのが食品包装なのです。
まとめ
食品包装にはピロー包装、深絞り包装、シュリンク包装、スキンパックなどさまざまな形態や技法の種類があり、商品の性質や形状に合わせたものが選択されます。
さらに包装に使われる材質も多岐にわたり、それぞれメリット・デメリットが異なります。
食品の包装を検討する際には、保護機能や利便性を高める機能、流通・保管効率を高める機能、情報伝達機能の4つの役割を考慮したうえで、その商品に適したものを選択する必要があるでしょう。
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