
医薬品パッケージ印刷は医薬品や医療機器などの包装に施される印刷のことで、消費者の健康に直結する重要なものです。
薬機法では医薬品のパッケージに関するルールが細かく定められており、それらを遵守してパッケージ印刷を行う必要があります。
この記事では、医薬品のパッケージ印刷の重要性や法規制について詳しく解説します。
医薬品パッケージの印刷方法や印刷会社に依頼する際のポイントもまとめているため、参考にしてみてください。
目次
医薬品パッケージ印刷とは

医薬品パッケージ印刷とは、医薬品や医療機器などを含む包装資材に施す印刷のことです。
私たちが普段目にする医薬品には幅広い包装が用いられていますが、医薬品パッケージ印刷ではそれら一つひとつの製品に合った適切な形状・用紙・印刷方法などを選択します。
医薬品はドラッグストア等で扱われる「OTC医薬品」と、医療機関や調剤薬局で扱われる「医療用医薬品」の2種類があり、それぞれ医薬品医療機器等法や医薬品表示ガイドラインなどに則って、患者や医療従事者に必要な情報が表示されています。
医薬品のパッケージ印刷が重要な理由

医薬品のパッケージ印刷が重要な理由は以下の4つです。
- 誤飲につながる恐れがあるため
- 回収につながる恐れがあるため
- 他の医薬品と差別化する必要があるため
- 医療過誤につながる恐れがあるため
ここでは上記4つの理由についてそれぞれ解説します。
誤飲につながる恐れがあるため
医薬品のパッケージ印刷は誤飲につながる恐れがあるため、取り違いや誤飲を防ぐための工夫が必要となります。
医薬品の誤飲を防ぐためのパッケージ印刷の工夫方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 含有表示を薬の名称よりも大きく表示する
- 効果や注意事項を大きく表示する
- 文字やパッケージの色ではっきり区別する
- 開封して目に入る場所に「類似名あり」と大きく表示する
上記のような工夫を施すことで、医療従事者による医薬品の取り違いや患者さんの誤飲を防ぐことができます。
回収につながる恐れがあるため
医薬品は生命や健康に直結するため、パッケージ印刷にたった1文字でも間違いがあると回収につながる恐れがあります。
パッケージのミスが取り違いや誤飲を招く可能性があるためです。そのため医薬品では適切なパッケージ印刷を行う必要があります。
他の医薬品と差別化する必要があるため
医薬品市場には多くの競合商品が存在するため、パッケージ印刷は他の製品との差別化に重要な役割を果たします。
製品の色、デザイン、ロゴなどは、消費者が一目で商品を認識できるようにするための重要な要素です。
またブランドの信頼性や品質を視覚的に伝えることもできます。
特にジェネリック医薬品が増えている現代では、オリジナリティを訴求するためにパッケージデザインがますます重要視されています。
医療過誤につながる恐れがあるため
医薬品のパッケージに誤りがある場合、それが医療過誤に直結するリスクがあります。
例えば薬の名前が似ていたりパッケージデザインが似通っていたりする場合、医療従事者が誤って別の薬を使用する可能性が高くなります。そのためパッケージには薬品の名前や成分、使用方法などを明確かつ一目でわかるように印刷する必要があります。
医療現場での安全性を確保するためにも、パッケージ印刷は重要な役割を持っているのです。
医薬品パッケージの印刷方法

医薬品パッケージの印刷方法には、以下の4つの方法があります。
- グラビア印刷
- オフセット印刷
- フレキソ印刷
- UV印刷
ここでは上記4つの印刷方法の特徴についてそれぞれ解説します。
グラビア印刷
グラビア印刷は凹版印刷の一つで、金属板の凹みにインキを流し込んでそこに印刷物を押し付ける印刷方法です。
グラビア印刷には以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・幅広い色彩・濃淡の表現ができる ・紙、フィルムなどさまざまな基材に対応可能 ・大ロット向き | ・金属を加工して版を作るため他の印刷方法と比べて費用が高め |
グラビア印刷の大きな特徴といえるのが、インキの量をコントロールすることにより幅広い色彩・濃淡の表現ができることです。また紙やフィルムなどさまざまな基材に対応可能な印刷方法のため、幅広い業種業態で使用されています。
オフセット印刷
オフセット印刷は凹凸のない平らな版を使用する平版印刷で、画線部は親油性でインキがつき、非画線部は親水性で水分を与えておくとインキがつかないため、インキと水を与えながら印刷する印刷方法です。
オフセット印刷のメリット・デメリットをまとめると以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・印刷スピードが速いため短時間で大量印刷が可能 ・大量印刷でコストダウンにつながる ・色の再現性が高く緻密なデザインも鮮明に印刷できる | ・印刷濃度が不十分 |
オフセット印刷は印刷スピードが速く、短時間で大量印刷を実現できる点が大きなメリットです。
さらに色の再現性が高いため、美しいグラデーションや写真など緻密なデザインの印刷に適しています。
フレキソ印刷
フレキソ印刷は凸版印刷の一つで、ゴムや樹脂でできた柔軟性のある凸版にインクを乗せて転写する印刷方法です。
フレキソ印刷には以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・凹凸のある紙でもムラなくツヤのある仕上がりになる ・コストが安い | ・印刷時の版圧が高くなりやすく、材質によってにじみやすい ・細かなデザインや文字はつぶれやすいので不向き ・マージナルゾーンが出る |
フレキソ印刷は段ボールなどの凹凸のある紙でも、ムラなくツヤのある仕上がりにできる点が大きな特徴です。
しかし緻密なデザインには不向きで、印刷時にベタムラができたり不自然なグラデーションになったりしやすい傾向にあります。
そのため1〜2色程度の印刷でシンプルなデザインを印刷したい場合におすすめです。
UV印刷
上記3つの印刷方法に加えて、紫外線がインクを硬化させる原理を利用したUV印刷という印刷技術もあります。
UV印刷は、紫外線を照射することにより瞬時に硬化・乾燥する「UVインキ」を使用した印刷方法です。
UV印刷のメリット・デメリットを簡単にまとめると以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・瞬時に乾くため納期を短縮できる ・印刷パウダーを使用しないためざらつきや変色などの トラブルが起こりにくい ・耐摩耗性や耐久性に優れている ・一般的なオフセット印刷では難しい特殊紙にも印刷可能 ・人体や環境にやさしい | ・一般的なオフセット印刷よりも高価 ・黒インキの色が薄くなりやすい ・折ったり曲げたりする印刷物には不向き |
上記の通り、UV印刷は速乾性・耐摩耗性・耐久性に優れており、人体や環境にやさしい印刷方法です。
通常のオフセット印刷と違ってインキを乾燥させる時間を必要としないため、納期を大幅に短縮できます。
医薬品パッケージ印刷の法規制

医薬品パッケージ印刷において、押さえておかなければいけない法規制のポイントがあります。
- 薬機法に基づいて必要な情報を記載する
- 容器や被包に直接表示すべき事項
- 表示方法
- 記載が禁止されている事項
ここでは上記4つのポイントについてそれぞれ解説します。
薬機法に基づいて必要な情報を記載する
医薬品パッケージ印刷にかかわってくるのが「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」という法律で、これに基づいて必要な情報を記載する必要があります。
薬機法では、医薬品の容器のラベルや外箱などに表示しなくてはいけない情報を定めています。
医薬品の容器のラベルや外箱などに対する表示の規定は以下の通りです。
第五十条 医薬品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、
厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 製造販売業者の氏名又は名称及び住所
二 名称(日本薬局方に収められている医薬品にあつては日本薬局方において定められた名称、その他の医薬品で一般的名称
があるものにあつてはその一般的名称)
三 製造番号又は製造記号
四 重量、容量又は個数等の内容量
五 日本薬局方に収められている医薬品にあつては、「日本薬局方」の文字及び日本薬局方において直接の容器又は直接の
被包に記載するように定められた事項
六 要指導医薬品にあつては、厚生労働省令で定める事項
七 一般用医薬品にあつては、第三十六条の七第一項に規定する区分ごとに、厚生労働省令で定める事項
八 第四十一条第三項の規定によりその基準が定められた体外診断用医薬品にあつては、その基準において直接の容器
又は直接の被包に記載するように定められた事項
九 第四十二条第一項の規定によりその基準が定められた医薬品にあつては、貯法、有効期間その他その基準において
直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項
十 日本薬局方に収められていない医薬品にあつては、その有効成分の名称(一般的名称があるものにあつては、その
一般的名称)及びその分量(有効成分が不明のものにあつては、その本質及び製造方法の要旨)
十一 習慣性があるものとして厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、「注意―習慣性あり」の文字
十二 前条第一項の規定により厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、「注意―医師等の処方箋により使用すること」
の文字
十三 厚生労働大臣が指定する医薬品にあつては、「注意―人体に使用しないこと」の文字
十四 厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、その使用の期限
十五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
表示方法
医薬品のパッケージやラベル、説明書に関する印刷には、文字の大きさや色などの細かな表示方法のルールが定められています。
例えば医薬品パッケージに表示される「第2類医薬品」などの分類表示の場合、文字の大きさは8ポイント以上、色は黒または白を必ず使用する必要があります。使用説明書にも同様に定められたルールがあります。
細かなルールが定められているため、医薬品パッケージを製作する際は必ず確認しましょう。
記載が禁止されている事項
医薬品パッケージへの記載が禁止されている事項は、薬機法第54条で定められています。
第五十四条
医薬品は、これに添付する文書、その医薬品又はその容器若しくは被包(内袋を含む。)に、次に掲げる事項が記載されて
いてはならない。
一 当該医薬品に関し虚偽又は誤解を招くおそれのある事項
二 第十四条、第十九条の二、第二十三条の二の五又は第二十三条の二の十七の承認を受けていない効能、効果又は性能
(第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項又は第二十三条の二の二十三第一項の規定により厚生労働大臣がその
基準を定めて指定した医薬品にあつては、その基準において定められた効能、効果又は性能を除く。)
三 保健衛生上危険がある用法、用量又は使用期間
引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
上記の通り、医薬品に関して虚偽または誤解を招く恐れのある事項、未承認の効能・効果、衛生上危険があるとされる用法・用量、または使用期間はパッケージに記載できません。
医薬品パッケージ印刷を依頼する際のポイント

医薬品パッケージ印刷を依頼する際のポイントは以下の3つです。
- 信頼できる印刷会社に依頼する
- 情報の間違いには十分注意する
- 素材に適した印刷方法を選ぶ
ここでは上記3つのポイントについてそれぞれ解説します。
信頼できる印刷会社に依頼する
医薬品パッケージ印刷を依頼する際には、その会社が過去に同様の案件を取り扱ってきたかどうかを確認することが大切です。
実績や顧客の評価をチェックすることで、その会社がどれだけ信頼性があるかを判断できます。
さらに認証や規格に準じた運営がなされているかも確認する必要があります。
特に医薬品に関わる印刷では、厳格な品質管理が求められるため、その点に関しても確認しておくと良いでしょう。
情報の間違いには十分注意する
医薬品パッケージに記載される情報は、消費者にとって非常に重要であり、間違いがあってはいけません。
そのため印刷前に何度も内容を確認し、誤りがないようにすることが求められます。
情報が不正確であると、消費者に混乱を招くだけでなく、法的なトラブルに発展する可能性もあります。
そのため印刷内容のチェックは十分注意して行う必要があります。
素材に適した印刷方法を選ぶ
医薬品パッケージに使用される素材は多種多様で、それぞれに適した印刷方法があります。
たとえば紙製のパッケージにはオフセット印刷が適していることが多いですが、プラスチックや金属製のパッケージには別の印刷技術が求められることもあります。
素材に応じた最適な印刷方法を選ぶことで、より美しく鮮明なパッケージを実現することができるでしょう。
まとめ
医薬品パッケージ印刷に表示される様々な情報は、消費者の安全や健康に直結する重要なものです。
不適切なパッケージは医療過誤につながる恐れがあり、たった1文字の印刷ミスでも回収につながる可能性があります。
それゆえ、薬機法に書かれている表示に関するものについては、十分理解した上で、信頼できる印刷会社を選ぶことはもちろん、情報の間違いには十分に注意することが大切です。
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