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2024-09-04

PTPシートとは?製造工程や利点・課題などを紹介

PTPシートとは?

PTPシートは、主に医薬品の包装でよく使用されるものです。
プラスチック成形部分を押すことで開口部を覆うアルミ箔を破り、中に収納した薬を1錠ずつ取り出せる仕組みとなっています。
この記事では、PTPシートの特徴について詳しく解説します。
PTPシートの利点や課題もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

PTPシートとは

PTPシートとは

PTPは『Press Through Package』の略称で、カプセルや錠剤などの医薬品に多く使われている包装形態です。
ここではPTPシートの構造、主な材料、ブリスター包装やヒートシール包装との違いについて解説します。

PTPシートは薬の包装方法のひとつ

PTPシートは薬の包装形態の一つで、カプセルや錠剤をプラスチックとアルミで包んだものです。
プラスチック成形側から指で押し出すことにより、内容物を取り出すことができます。
プラスチックシートにはさまざまな種類があり、使用する種類によって酸素遮断性や遮光性、防湿性などの機能を付加することが可能です。

PTPシートの構造

PTPシートは、凸型を成形したプラスチックシートとアルミ箔で構成されています。
プラスチックシートは透明で内部の薬が見えるようになっており、アルミ箔は裏側を覆って内容物を外部環境から保護します。
この構造により薬は個別に密封され、外部の影響を受けにくくなっているのです。

PTPシートの主な材料

PTPシートの主な材料としては、PVC(ポリ塩化ビニル)やPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)などが挙げられ、これらを重ねてシートにしたり単層で使用したりします。
上記の材料それぞれの特徴は以下の通りです。

PVC
(ポリ塩化ビニル)
難燃性、耐薬品性、耐久性、加工性に優れている材料。可塑剤の混合量により柔らかさを細かく調整できるため、幅広い製品に加工できる。
PP
(ポリプロピレン)
剛性、耐熱性、光沢性、延伸性、耐薬品性に優れている材料。加工性が高いため、射出成形や押出成形、ブロー成形、真空成形などさまざまな製法に対応可能で、大量生産にも適している。
PE
(ポリエチレン)
加工性、防水性、耐薬品性に優れている材料。大量生産が可能で、あらゆる製品に使用されている。
PVDC
(ポリ塩化ビニリデン)
酸素バリア性や水蒸気バリア性に優れている材料。主に家庭用ラップや食品保存用の包装材料などに使われている。

ブリスター包装との違い

PTPシートはブリスター包装の一種です。
ブリスター包装は、プラスチックを成形して開口部を台紙やプラスチックフィルムで覆うもので、一般的な開封方法は捲り開ける方法です
PTPシートは開口部を押出性の高いアルミ箔にしたもので、高齢者などの力が弱い人でも容易に内容物を取り出せるようにしたものとなっています。
つまりPTPシートはブリスター包装の押出性を高めた包装方法と考えてよいでしょう。

ヒートシール包装との違い

ヒートシール包装は薬を特殊なフィルム袋に入れ、そのフィルム同士を熱で溶かして密封する方法です。
ヒートシール包装は、完全に密封されているため、薬をより厳密に保護できるメリットがありますが、PTPシートのように簡単に取り出すことはできません。
またヒートシール包装は、大量の医薬品や粉末状の薬に適しているのに対し、PTPシートは錠剤やカプセル剤に特化しています。
用途や使用状況に応じて、適切な包装形態を選ぶことが重要です。

PTPシートの製造工程

PTPシートの製造工程

PTPシートの製造工程は以下の通りです。

  1. PTPシートに熱をかける
  2. 錠剤やカプセル剤を入れるポケットを成形する
  3. シートに異物が混入していないか検査する
  4. シートに錠剤やカプセル剤を充填する
  5. アルミ箔をかぶせてヒートシールする

上記の製造工程後は決められた枚数で積み重ねられ、アルミ材の袋に梱包したりプラスチックのバンドで留めたりすることで集積されます。

PTPシートはリサイクルが可能

PTPシートはリサイクルが可能

最近はPTPシートのリサイクルについて、徐々にではありますが、様々な動きが出てきています。
ここではPTPシートのリサイクルについて解説します。

リサイクルの流れ

PTPシートのリサイクルは、まず使用済みのシートを回収することから始まります。
消費者や医療機関から回収されたPTPシートはリサイクル施設に送られ、施設では、まずシートをプラスチックとアルミニウムに分離するための専用設備を使用します。
分離されたプラスチックは洗浄され、新たなプラスチック製品の原料として再利用されるという流れです。
一方、分離されたアルミニウムは溶解され、新たなアルミ製品の材料となります。
これによりPTPシートは環境に負荷をかけることなく、再び資源として生まれ変わることができるのです。

市販薬や処方薬だけでなく廃材もリサイクル

PTPシートは市販薬や処方薬だけでなく、廃材もリサイクルが可能です。
株式会社カナエでは医薬品メーカーの医薬品製造工場で発生したPTP包装廃材を回収し、リサイクルに繋げるという取り組みを行っています。
医薬品製造工場では錠剤やカプセル剤を充填する製造過程で、PTPの空シートや抜きカスの廃材が約10~20%排出されています。
これらをプラスチックとアルミに剥離させ、焼却せずにリサイクルすることで約94%のCO2排出量の削減が実現できるのです。

市販薬や処方薬だけでなく廃材もリサイクル

環境保護を目指すさまざまな企業がこのような工場で発生したPTP包装廃材のリサイクルに取り組み始めています。

PTPシートの利点

PTPシートの利点

PTPシートの利点として以下の3つが挙げられます。

  • 薬の変質を防いで保護する
  • 薬を簡単に取り出せる
  • 材質によってさまざまな機能を付与できる

ここでは上記3つの利点についてそれぞれ解説します。

薬の変質を防いで保護する

PTPシートの利点の一つは、薬の変質を防いで保護することです。
薬にはさまざまな種類がありますが、中には湿気によって成分が変質したり体内での崩壊性が低下したりする薬や、紫外線によって含有成分が分解される薬などがあります。
湿気や紫外線などの影響で変質してしまう薬の場合、包装材にそれらの影響を防ぐ材料を使用しなくてはいけません。
PTPシートは吸湿性、高防湿性、遮光性などの役割を果たし、薬の変質の原因となる外的要因からの影響を防ぐことが可能です。

薬を簡単に取り出せる

PTPシートの大きな利点は、使いやすさです。
シートに入れられた錠剤やカプセルは、プラスチック成形部分を押すだけで簡単に取り出すことができます
この構造により、患者や医療従事者が薬を取り扱う際の手間を大幅に軽減することができます。
また錠剤取出器などの補助具を使えば、さらに簡単に取り出すことができます。

材質によってさまざまな機能を付与できる

PTPシートは、使用する材質によって様々な機能を付与することができます。
例えばPVDC(ポリ塩化ビニリデン)系を使用することで、防湿性を高めたシートを開発した企業があります。
防湿性の高いシートは、湿気を含むと効能に影響が出る薬に適しているでしょう。
PTPシートにはさまざまな材料を使用できるため、付与したい機能や医薬品の性質に合わせた材料を選定することが大切です。

PTPシートの課題

PTPシートの課題

ブリスター包装の中でも押出性に優れたPTPシートですが、以下のような課題もあります。

  • 誤飲の可能性
  • 薬を取り出しにくい場合がある
  • リサイクルがなかなか進まない

ここでは上記3つの課題についてそれぞれ解説します。

誤飲の可能性

PTPシートは誤飲の可能性があります。
主に高齢者や乳幼児を中心に、PTP包装シートごと薬を誤飲してしまう重大な事故がまれに発生しているのです。
PTPシートを使用した薬は1錠分ずつ切り離して管理できるものもあり、これにより薬を出さずに角が鋭利になっているシートごと飲み込んでしまう場合があります。
シートごと飲み込んでしまった場合、消化管や血管、気管、気管支などに穴が開いてしまう穿孔が起こることがあり、この場合は手術が必要となるケースもあります。
さらに誤飲したシートはX線検査で透過するため、発見が遅れて重症化してしまうこともあります。
近年ではPTPシートは1錠ずつ切り離せないようになっていたり、万が一誤飲した場合でも内臓が傷つきにくい柔らかいシートを使用したりといった工夫がされています。

薬を取り出しにくい場合がある

PTPシートは薬の取り出しやすさが大きな利点ですが、薬を取り出しにくい場合もあります。
特に高齢者や手先の不自由な人にとって、プラスチック部分を押してアルミフィルムを破る作業が難しいことが要因の一つです。
錠剤取出器などの補助具が存在しますが、十分に普及していません。
この取り出しにくさは服薬スケジュールの遅延や薬の誤用に繋がりかねないため、高齢患者に服薬指導をする際は「爪を使うと出しやすい」などの具体的な説明が必要と考えられます。

リサイクルがなかなか進まない

PTPシートのリサイクルが進まない理由として、いくつかの課題が挙げられます。
まずPTPシートはプラスチックとアルミニウムの複合素材で構成されているため、これらを分離してリサイクルするには特別な設備が必要です。
さらに家庭での使用後にPTPシートを回収するシステムが十分に整備されていないことも大きな問題となっています。
製薬会社が協力して回収システムを構築する必要がありますが、自治体の許可や資金面での課題もあり、実現には時間がかかっています。
また、消費者側のリサイクル意識の向上も必要と考えられるでしょう。

まとめ

PTPシートはカプセルや錠剤などの医薬品に多く使われている包装方法で、押出性の高いアルミで開口部を覆うことにより薬を取り出しやすい特徴を持ちます。
主な利点としては薬の変質を防いで保護できること、材料によってさまざまな機能を付与できることなどが挙げられるでしょう。
リサイクルもできる環境にもやさしい包装ですが、まだまだリサイクルの仕組みが整っているとはいえず、誤飲などの課題も抱えています。
しかし近年はそれらの課題を解決するような製品も開発されているため、今後はさらに使い勝手が良くなっていくことが期待できるでしょう。
株式会社カナエでは、PTP用台紙包装やPTP用蓋材、PTPシートなどのPTP関連の包装を数多く扱っております。
内容物に適した包装をご提案可能です。包装でお悩みの方はぜひ一度当社までご相談ください。

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