包装の豆知識のコーナーにようこそ!
今回は、「包装用フィルムの構造」がテーマです。
スーパーやドラッグストアなどでたくさんの商品が並んでいるのを見かけますよね。
食品、化粧品、医薬品、雑貨・・・さまざまな商品がカラフルな印刷を施されたプラスチックフィルムで包まれていますが、どのような構造になっているのでしょう?
一見すると1枚のフィルムのように見えますが、実は複数枚のフィルムを貼り合わせた構造(複層化)になっていることが多いのです。ただし、包装用フィルムのすべてが複層化している訳ではなく、ゴミ袋やレジ袋のような簡単な包装袋は単一の素材で構成されているものあります。
この複層化しているフィルムを一般的に「ラミネートフィルム」と呼びます。
ラミネートフィルムは機能別に「ベース層」と「シーラント層」、および「中間層」とに分けることができます。
まずベース層は包装用フィルムの一番外側に位置し、いわゆる「骨格」に当たります。
ベース層は機械的強度(引っ張り・曲げ・引き裂き・突き刺しなどの強さ)やバリア性(水蒸気、酸素、光などを遮断)、耐熱性、印刷適性などが必要になります。
ベース層に使われる素材は、ポリエステル(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリアミド(PA)が多く、プラスチック以外では紙素材やセロハンも使われています。
次にシーラント層は、包装用フィルムの一番内側に位置し、包装袋の内面となります。
シーラント層はその名のとおり熱シール性能が最も必要な機能ですが、それ以外にも直接包装製品の中身と「触れる」ことになりますので、フィルムから中身へ、また中身からフィルムへ影響がないことも求められます。
シーラント層としてよく使われる素材としてはポリエチレン(PE)や無延伸ポリプロピレン(CPP)があります。
また中間層は、ベース層とシーラント層の間に位置し、ベース層やシーラント層だけでは必要な性能が不足している時に、ラミネートフィルム全体の補完機能を目的に組み込まれます。
例えば、水蒸気や酸素・光などをほぼ完全に遮断したい場合はアルミニウム箔を組み込んだり、重量物用の包装(米袋や原料袋など)では、フィルムが切れたり破れたりすることを抑制するための補強用としてポリアミド系フィルムを組み込んだりします。
このように中間層は、その用途に合わせてさまざまな組み合わせ方が存在しており、また単層(一つの層)とは限らず複層(二つ以上の層)になっている場合もあります。 (※ベース層、シーラント層、中間層を一体化させるには、「ラミネート加工」を行う必要がありますが、こちらはまた次の機会に改めてお話したいと思います。)
ところで、「なぜシンプルに単一素材のフィルムで包装せずに、複層化したラミネートフィルムを用いて包装しているのか?」と疑問に思った方もいらっしゃるかと思います。
理由としては単純で、包まれる中身の状況や製品の品質保証をすることなどを考えると、単層のフィルムで包装できるものは限られるためです。
包装用フィルムには様々な機能が求められます。内容物の保護、取り扱いの利便性、情報の提供といった包装の三大機能はもちろんですが、生産性、加工性、コストなども大きく係わってきます。これらをすべて満足させることは単一の素材だけでは難しいため、さまざまな種類の素材をうまく組み合わせて機能とコストのバランスを取った材料となるよう、製品に合わせて設計・加工されたものがラミネートフィルムなのです。
最後に、包装用フィルムとしてラミネートフィルムが広く使われていますが、使用後に層ごとの分離が技術的にもコスト的にも難しく、環境対応の側面で見るとリサイクルには不向きなものになっています。そのため、主に焼却炉で燃やし、熱エネルギーとして再利用されていますが、ペットボトルや金属缶のように同じ素材としての再利用はほとんどされていません。
現在、さまざまなメーカーや大学機関などがラミネートフィルムの分離→回収→再利用の研究をしていますので、今後の実用化が待たれますね。