包装の豆知識のコーナーにようこそ!
今回は、「様々な機能を持った材料(水蒸気バリア性)」がテーマです。
包装用フィルムの構造(ラミネートフィルム)で少し触れましたが、皆さんがよく見かけるパッケージのプラスチックフィルムは、実は複数の薄いフィルムを重ね合わせて作られています。
その理由は、性能面・コスト面・加工性など観点から、単一(単層)のフィルムで包装の一番の目的である「内容物を保護する」ことを満足させるのが難しいためです。
そのため、目的・用途に合わせて、様々な種類の素材が組み合わせて使用されています。
今回はその目的のうち、「水蒸気バリア性」を付与するため、どのような素材が使用されているのかを紹介したいと思います。
水蒸気バリア性
水蒸気バリア性(透湿度)とは、プラスチックフィルムなどの水蒸気の透過しやすさを示すもので、単位時間・単位面積当たりの試験片を通過する水蒸気の量を重量で示したものです。単位は【g/㎡・day】で、この数値が小さいほど、水蒸気バリア性が高い(水蒸気を透過しにくい)ということになります。
水分の透過が製品に悪影響を及ぼす例は数多くありますが、それを防止するための素材もいくつかあります。
(1) アルミニウム箔
金属のアルミニウムを7~20μm程度(1μm=1/1000mm)の薄い箔状に加工したもの。
水蒸気以外にも酸素、光、においなども不透過となる。医薬品、食品、化粧品など幅広く使用されている。
(2) アルミニウム蒸着フィルム
PET(ポリエステル)などのプラスチックフィルムに、金属のアルミニウムを蒸着させ、極薄の膜をフィルム上に形成させたもの。
蒸着膜の厚みは40~60㎚(1㎚=1/100万mm)程度であり、膜を構成するアルミ粒子間に微小な「隙間」があるため、アルミニウム箔ほどの高バリア性はない。
また蒸着膜厚は薄い場合、光もいくらか透過してしまう。
(3) 透明蒸着フィルム
アルミニウム蒸着フィルムと同じように、PETフィルムに無機物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素)を蒸着させたもの。
このフィルムは水蒸気や酸素のバリア性は高いが、光は通常のフィルムと同等に透過するため、「中身が見える」という利点がある。
(4) PVDC(ポリ塩化ビニリデン)系フィルム
PVDCは水蒸気と酸素のバリア性を持っており、フィルムとして包材構成に組み込むこともあるが、PET(ポリエステル)やOPP(延伸ポリプロピレン)などのフィルムにコーティングをすることで、元素材のバリア性を向上させたものも上市されている。
こちらも光透過はするので、中身を見ることができる。
(5) フッ素系フィルム
PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)は、プラスチック素材としては非常に高い水蒸気バリア性を持つ。
ただし、価格も高価なため、錠剤やカプセルの医薬品包装(PTP)の用途での採用に限られている。