包装の豆知識のコーナーにようこそ!
今回は、「様々な機能を持った材料(酸素バリア性)」がテーマです。
酸素は人間が生活活動をする際には必須のものなのは皆さんもよくご存じの通りです。
しかしながら、食品の中に含まれる油分は酸素が近くにあると、「酸化」してしまい風味や色が変わってしまいます。
そのために食品を長期保存するような場合、空気中の酸素の影響を受けないように「酸素バリア性」を持つ包装材料で包装する必要があります。
酸素バリア性を持つ包装材料は、主にアルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルム、透明蒸着フィルム、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)などがあります。それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
酸素バリア性
酸素バリア性とは、プラスチックフィルムなどの酸素の透過しやすさを示すもので、単位時間・単位面積当たりの試験片を通過する酸素の量を体積で示したものです。単位は【cc/㎡・day・atm】で、この数値が小さいほど、酸素バリア性が高い(酸素を透過しにくい)ということになります。
(1) アルミニウム箔
金属のアルミニウムを7~20μm程度(1μm=1/1000mm)の薄い箔状に加工したもの。
酸素以外にも水蒸気、光、においなども不透過となる。医薬品、食品、化粧品など幅広く使用されている。
(2) アルミニウム蒸着フィルム
PETなどのプラスチックフィルムに、金属のアルミニウムを蒸着させ、極薄の膜をフィルム上に形成させたもの。
蒸着膜の厚みは40~60㎚(1㎚=1/100万mm)程度であり、膜を構成するアルミ粒子間に微小な「隙間」があるため、アルミニウム箔ほどの高バリア性はない。
また蒸着膜厚は薄い場合、光もいくらか透過してしまう。
(3) 透明蒸着フィルム
アルミニウム蒸着フィルムと同じように、PET(ポリエステル)フィルムに無機物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素)を蒸着させたもの。
このフィルムは水蒸気や酸素のバリア性は高いが、光は通常のフィルムと同等に透過するため、「中身が見える」という利点がある。
(4) PVDC(ポリ塩化ビニリデン)系フィルム
PVDCは水蒸気と酸素のバリア性を持っており、フィルムとして包材構成に組み込むこともあるが、PETやOPP(延伸ポリプロピレン)などのフィルムにコーティングをすることで、元素材のバリア性を向上させたものも上市されている。
こちらも光透過はするので、中身を見ることができる。
おや?ここまでは前回の水蒸気バリア性フィルムの紹介でも出てきた材料ですね。
つまり、上記の材料は、水蒸気バリアと酸素バリアの両方の特性を持つ包装材料なのです。
さて、では酸素バリア性だけに優れる材料はあるのでしょうか?
答えは…あります。その代表的な材料はEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)です。
(5) EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)
EVOHはエチレンと酢酸ビニルの共重合体を加水分解して合成されたもので、株式会社クラレにて世界で初めてフィルム化された。
EVOHの特徴は、乾燥状態においてガスバリア性と保香性に優れた性質を持つが、湿度による影響を受けやすく高湿度になるほどガスバリア性能が急激に低下する点である。そのため使用する際は防湿性の高い材料(PP:ポリプロピレンなど)と組み合わせたり、内容物は水分量の少ないものに限定したりして、EVOHに水分の影響を与えないような工夫が必要となる。
その他の特徴としては、耐油性、耐薬品性、非吸着性、透明性、光沢などに優れる点などが挙げられる。